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エスカレーションのリスクが高まるイスラエル・ハマス戦争

イスラエル ハマス 学校長 飛耳長目 Oct 25, 2023
連載コラム|菅原出飛耳長目

こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

高まる緊張と迫る地上侵攻

10月22日、イスラエルのネタニヤフ首相は、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスだけでなく、北部国境地帯のレバノンのシーア派民兵組織ヒズボラを合わせた二正面で「あらゆる作戦の準備ができている」と強調。ハマスとヒズボラと同時に対峙できる、との強気の姿勢を見せています。

イスラエル軍によるガザへの地上侵攻も秒読み段階に入っていると思われ、緊張が高まっています。

しかし、強気の姿勢をみせるイスラエルに対し、バイデン政権はガザ侵攻作戦さえも、戦後の構想が固まるまで遅らせるように働きかけを強めているようです。

22日、ブリンケン米国務長官は、NBCの番組「Meet the Press」に出演し、「イスラエルはハマス打倒の任務を完了した後に誰がガザを支配することになるのか、戦略を練っていなければならない」「ハマス打倒後の統治をどうするかについてさまざまな考えがあるが、(作戦前に)そのすべてを解決する必要がある」と述べました。 Hamas)。ハマスの軍事力を排除する。この脅威が存在しないようにする。長引くだろう」と述べています。

バイデン政権がイスラエルに対し、“より広範な戦略について考えるよう公式に促した”のは、これが初めてです。

先週の「飛耳長目」で、イスラエルが落としどころのない、終わりのない戦争に突き進んでいきそうだと警鐘を鳴らしましたが、当然、米政府もその点を懸念してイスラエルに待ったをかけようとしているようです。

イスラエル政府高官は、現在ハマスの撲滅に集中しており、その後のことは考えていないと公言しています。ネタニヤフ首相自身、バイデン米大統領がイスラエルを訪問した際に同じことを語ったと、関係者に明らかにしています。

これに対してバイデン政権は、ハマス打倒後の統治など戦後計画を固めるまでガザ侵攻作戦を遅らせるように働きかけているのです。また、ヒズボラとの二正面作戦も辞さない構えのイスラエルに対し、「それは危険だからやめて欲しい」と伝えているようです。

18日にイスラエルを訪問した際、イスラエルの戦時内閣との会談で、バイデン大統領は、ヒズボラとの全面衝突がイスラエルにもたらす多くの影響について厳しい質問を投げかけ、二正面戦争の危険性を強調したことが伝えられています。

バイデン政権は、イスラエルを全面的に支持するように装ってはいますが、実際には、紛争のエスカレーションを避けるため、ガザ侵攻作戦の政治目的を明確にさせ、現実的な落としどころのある作戦に留めるように釘を刺しており、ヒズボラを含めた他の武装勢力との戦闘にエスカレートさせないように説得工作を続けているようです。

親イランは勢力による攻撃の開始

一方で先週後半から週末にかけて、レバノンのヒズボラ、イラクのシーア派民兵組織、イエメンのフーシ派など、近隣の親イラン派武装勢力による攻撃が一斉に行われ、紛争拡大の懸念が強まっています。

報道によれば、イランは、近隣諸国の親イラン派武装勢力による「イスラエル及び米国権益に対する限定的な攻撃を認めた」ようです。ロイター通信のスクープ記事によれば、イランの指導部は、「イスラエルの軍事目標への限定的な越境攻撃と地域の他の同盟組織による米国の標的に対する低レベルの攻撃を承認する」との方針が決められたとのことです。ただし、イラン自身を紛争に巻き込むような大規模なエスカレーションを防ぐという条件付きだとされています。

ちょうどこの報道と同じタイミングで、イラクや紅海での親イラン派武装勢力による攻撃の情報が飛び交い緊張が走りました。

10月22日、レバノンのヒズボラは、イスラエル軍に対する攻撃キャンペーンの一環として、17件の攻撃を実施。ヒズボラは初めて、イスラエル国防軍のヘリコプターに向けて地対空ミサイルを発射。イスラエル側も航空機でヒズボラの標的を攻撃し、6人の戦闘員を殺害する一方、対戦車ミサイルの直撃を受けてイスラエル兵も1名死亡したと報じられました。

10月22日には、イラク西部アンバール県のアイン・アル・アサド空軍基地の米軍に対してドローン攻撃が行われました。「イラクのイスラム抵抗勢力」と名乗る武装勢力が、10月18日以来、イラクとシリアの米軍を標的にした9回のドローン攻撃とロケット弾攻撃を主張しています。

10月19日には、シリアのイラクとヨルダンとの国境に近いアル・タンフの米軍基地を狙った2機のドローンが撃墜され、軽傷者が出たことも報じられました。

さらに10月20日、米海軍は、イエメンから発射された陸上攻撃巡航ミサイル3発とドローン約8機を次々に撃墜したと発表。米国防総省は、ミサイルとドローンは「紅海に沿って北に向かい、イスラエルの標的に向かう可能性があった」と述べています。

このように親イラン派武装勢力が一斉にイスラエルや米軍に対する攻撃を展開したのです。

イランは、自分たちが紛争に巻き込まれない程度にイスラエルを牽制し、イスラエルがガザ攻撃に集中できないように戦力の分散を狙っているのかもしれません。もしくは、ヒズボラ等近隣諸国の親イラン派武装勢力を巻き込む紛争に発展した場合、大変なことになるぞ、とイスラエルや米国にエスカレーションのリスクを認識させるために限定的な攻撃を認めた可能性もあります。

紛争がエスカレートするリスクについて

しかし、もっと危険な要素も考えられます。ヒズボラやイラクの民兵組織等、ハマスに同情的な親イラン派武装勢力の現場指揮官たちが、ハマスを助けて参戦したいという好戦的な姿勢を抑えられなくなっている可能性もあるからです。

もしイランが、好戦的な親イラン派武装勢力の現場指揮官たちを抑えられずに限定的な攻撃を容認していた場合、エスカレーションを抑えられなくなる可能性も出てくるでしょう。

もし彼らとイスラエルの間で本格的な戦闘に発展してしまった場合、イランだけが行動を起こさないことは、「弱さの表れ」と受け取られ信頼を失う可能性も出てきます。

今後、イスラエルによるガザ攻撃が本格し、パレスチナの大義を長い間支持してきたイランが介入せずにいる場合、イランが政治的な立場を損なうことにもつながります。このため、紛争が拡大した場合、イランだけが傍観している訳にはいかず、結局はイランも介入することで紛争がエスカレートしてしまうリスクがあると言えるでしょう。

事態は少しずつ危険な方向に向かっているようです。今後も目が離せません。

10月20日には、飯田将史先生の「習近平政権の対米政策②」と畔蒜泰助先生の「プーチン・ロシアの国家戦略③」が公開されています。是非、ご視聴ください。

「終わりの見えない戦争」に突き進むイスラエル

11月6日(月)には第4回国際政治ウェビナー「2024年米大統領選と米中関係の展望」(https://www.oasis-academy.jp/oasis-voice-webinar-20231106)を、11月11日(土)には第2回OASISシンポジウム「エネルギー・経済安全保障と日本の未来」(https://www.oasis-academy.jp/oasis-symposium-2023-11-11)を開催する予定です。皆様奮ってご参加ください。 end in sight: Israel’s search for a Gaza strategy)」という論考を英フィナンシャル・タイムズ紙に寄稿しました。

「世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。今こそ歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが必要になっています。

是非一緒に学んでいきましょう!

菅原 出

OASIS学校長(President


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