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遂に米軍によるフーシ派攻撃で緊張高まる中東情勢

イスラエル ハマス 飛耳長目 Jan 23, 2024
連載コラム|菅原出飛耳長目

こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

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米軍との直接対決でもイエメン・フーシ派が攻撃を続ける理由

1月11日に米軍は、英軍と共にイエメンのフーシ派に対する軍事攻撃に踏み切りました。

19日に米中央軍は、フーシ派の部隊が紅海南部に向けて発射準備を整えていた対艦ミサイル3発を攻撃したと発表しており、この時点で6度目の攻撃になりました。

しかしこの程度の攻撃では、フーシ派の兵力を削ぐことはできず、米国はその後も攻撃を続けています。フーシ派は2015年以来、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)との戦争を通じて、空爆から兵器システムを守る技術を高め、実際に彼らが運用している兵器の大半は移動式だとされています。

ですから、空爆作戦だけでフーシ派の軍事能力を破壊するのは容易ではないのですが、こうした攻撃を仕掛けることで、彼らの抵抗の「意志」は確実に強めることになるでしょう。

バイデン大統領は18日に、「フーシ派が船舶への攻撃をやめるまで米国はフーシ派の兵器を攻撃し続ける」と発言。これまでの攻撃で「フーシ派を阻止できているのか?」という質問に対して「出来ていない」と述べ、「これからも米軍は攻撃を続けるのか?」との質問に「そうだ」と答えています。

フーシ派の方はどうなのでしょうか?米軍の攻撃を受けてビビッてしまっているのでしょうか?

「イスラエルや米国と直接対決できる…、この大きな祝福と名誉を神に感謝したい」…、フーシ派の指導者アブドゥル・マリク・アル・フーシ氏はこのように述べています。フーシ派はこれまでもサウジなどの敵との対決から常に強くなってきたとして、米国との直接対決を歓迎しています。

この辺の感覚は日本人には理解が難しいところですが、イエメンという世界の最貧国の地方の一武装組織が、今や米軍から直接敵視され、相手にする存在にまでなったのですから、彼らが「大きな祝福と名誉」を神に感謝したい、と思ったとしても不思議ではありません。

数カ月前まで「フーシ派」の名前など聞いたことのなかった世界中の人々が、今や誰もが「フーシ派と米軍の軍事衝突」に強い関心を持ち、国際メディアが連日トップニュースで伝えるようになったのです。

世界中にイスラエルのガザ戦争に反対し、イスラエルを支援する米国の不当性に憤りを感じている人たちがいることを忘れてはいけません。彼らにとって、イスラエルのガザにおける「ジェノサイド」に反対して武器を取って戦い、米軍とまで戦っている「勇敢な」戦士たちとして認識され、「フーシ派」の株が爆上がりしている可能性さえあります。

少なくとも、イエメン国内でフーシ派の支持や人気は高まり、今後この武装組織は若者たちのリクルートに困ることはないでしょう。

バイデン大統領は、「フーシ派が船舶への攻撃をやめるまで米国はフーシ派の兵器を攻撃し続ける」と述べていますから、当面この種の攻撃は続けられ、攻撃頻度が一時的に低くなったとしても、フーシ派による船舶への攻撃も続けられるでしょう。フーシ派は抵抗する意志を持っており、またミサイルの製造能力も持っていますから、彼らの製造拠点を全て破壊しない限り、攻撃を阻止することは困難だと思われます。

この状況は当面続くと考えるべきでしょう。

「完全勝利」まで戦争継続宣言したネタニヤフ首相

1月22日付の米ウォールストリート・ジャーナル紙は、米国、エジプト、カタールがイスラエルとハマスに対し、人質の解放から始まり、最終的にはイスラエル軍の撤退とガザでの戦争の終結につながる段階的な外交プロセスに参加するよう働きかけていることを報じました。

エジプト政府関係者によれば、この計画の前提として、恒久的な停戦を実現するために、将来的なイスラエルとサウジアラビアなどのアラブ諸国との関係正常化や、パレスチナ国家創設プロセスの再開に向けた話し合いも想定しているということです。

しかしこの報道を受けてイスラエルのネタニヤフ首相は21日、ハマスの要求には戦争終結が含まれているため拒否することを明らかにしました。

「もしわれわれがこれに同意するならば、われわれの戦士は無駄に倒れたことになる。これに同意すれば、イスラエル市民の安全を確保することはできない」と同首相は声明で述べたのです。

1月14日にネタニヤフ首相は、「イスラエル軍が“完全勝利”を収めるまでハマスとの戦いを続ける」と宣言していました。同首相は、ブリンケン米国務長官に対し、「イスラエルとハマスの戦争は米国の戦争でもある。なぜならイスラエルはイラン主導の“抵抗の枢軸”と戦っているからだ」と伝えたことが分かっています。

ネタニヤフ首相の戦争の目標は、「統治組織および軍事力としてのハマスの破壊」、「イスラエル人人質の救出」、そして「パレスチナ社会の脱過激化 」であり、この目標の達成を“完全勝利”だと改めて強調したことになります。

米英がフーシ派に対する攻撃に踏み切ったことで、「イラン主導の抵抗の枢軸VSイスラエル及び米英」という対立構図がますます固定化されています。ネタニヤフ首相が主張している通り、イスラエルは“イランという国際社会の脅威に対して戦っている”、“米英と同じ側に立って戦っている”として、自らの戦争を正当化できることになるため、停戦に対するインセンティブはますます低下していくでしょう。

米情報機関は最近、イスラエル軍がこれまでにハマス戦闘員の20%から30%を殺害したと、推定していますが、この数はイスラエル軍の見積りよりも低く、「ハマス壊滅」というイスラエルの目標に遠く及ばないことを示しています。

また米情報当局者によれば、「ハマスはイスラエルとガザにいるイスラエル軍を今後数カ月にわたって攻撃し続けられるだけの弾薬をまだ保有している」とのことです。またガザ市の一部で警察部隊を再編成しようという動きも判明しておりまして、ハマスの再生力の高さも示唆しています。

将来的には、今回米国、エジプトやカタールが提案したような和平案で落ち着かざるを得なくなる可能性はありますが、当面は、ネタニヤフ首相の主張通り、イスラエルは自分たちが定義する「完全勝利」に向けて戦争を続けるでしょう。

まだ20~30%しかハマスの戦闘員を排除出来ていない状態で停戦に応じたとすれば、ハマスの脅威が残り、ハマス再建が確実になります。ガザ戦争後の構想について様々な意見対立がありながらも、そんな状況を許すことはできないという点では、イスラエル政権内で一定のコンセンサスがあるのではないでしょうか。

ただ一方で、ネタニヤフ首相の主張する「完全勝利」には、「パレスチナ社会の脱過激化」という、戦争が続く限り達成不能な目標も含まれているため、いずれかの時点で現在のような戦争を持続することはできなくなり、妥協を余儀なくされることになるでしょう。

その段階に至るまでに今後どれくらい時間がかかるかは不明ですが、少なくとも今後数カ月、イスラエルはガザでの戦闘を継続させることになるでしょう。それまでに現在中東の他の地域で起きている紛争がどこまでエスカレートしてしまうのか、そうしたエスカレーションをどこまで管理することができるかが今後重要なポイントになるでしょう。

「世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。今こそ歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが必要になっています。
今後とも一緒に学んでいきましょう!

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OASIS学校長 菅原 出


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