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終わりの見えないガザ戦争

イスラエル ハマス 中東 学校長 飛耳長目 Dec 28, 2023
連載コラム|菅原出飛耳長目

こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

イスラエル軍被害増大で批判を浴びるネタニヤフ政権

イスラエル軍がガザ南部の軍事作戦で苦戦を続けています。ハマスのゲリラ戦術によってイスラエル兵士の死傷者が増大しており、イスラエル軍当局は、ガザ南部を支配下に置くには数カ月かかる見通しだと述べています。

12月26日、イスラエルのハレヴィ参謀総長は、ガザ国境からテレビ中継された声明の中で、戦争は「何カ月も」続くだろうと記者団に語っています。

「魔法のような解決策はなく、テロ組織を解体する近道もない。一週間かかろうが、数カ月かかろうが、我々はハマスの指導部に到達する」と同参謀総長は述べています。

イスラエル兵の被害が増大したことで、ネタニヤフ政権とイスラエル軍幹部は、米国の要求に応じて戦術を変更したことでイスラエルの兵士を危険にさらしているとの批判を受けています。

12月24日にイスラエルの経済産業大臣が、「兵士の命を危険にさらし、攻撃する前にビルに突入させるなど、とんでもない」「外圧に屈することは、たとえ親友(米国)であっても、酷い間違いだ」とネタニヤフ首相と軍部を批判したのです。

これに対してネタニヤフ首相は24日、前日にバイデン大統領と電話会談した時のことを閣議報告。「私は昨日バイデン大統領に、われわれは絶対的勝利まで戦い続ける」と述べ、「米国はこのことを理解している」と説明。米軍の要請に応じて戦術を変更することなどないと宣言していました。

ちょうど12月23日には、米ウォールストリート・ジャーナル紙が、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃直後に、レバノンのヒズボラに先制攻撃を計画していたイスラエルを、米国が説得してやめさせた、とのエピソードを報じていました。

バイデン大統領は10月11日、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、ヒズボラに対する先制攻撃を中止するよう促し、「そのような攻撃はより広範な地域紛争の火種になりかねない」と警告したそうです。当時、イスラエル軍の戦闘機は空中で命令を待っていましたが、ネタニヤフ首相はギリギリで攻撃命令を出すことをやめた、と同紙は報じたのです。

米国の「圧力」でイスラエルが軍事行動を控えたことが大々的に報じられた後だけに、ネタニヤフ首相は、“大規模空爆から小規模な対テロ作戦に切り替えろ”というバイデン政権の要請に従い、よりイスラエル兵に危険な作戦にシフトした、と考えられたのです。

ネタニヤフ首相は25日にガザ地区で戦闘中のイスラエル軍部隊を訪問。「私たちは立ち止まらない。戦い続けており、今後数日間、戦いを強めていく」と述べて戦争継続を誓っています。

ネタニヤフ首相が示した「平和のための3条件」

ネタニヤフ首相は25日、米ウォールストリート・ジャーナル紙に「平和のための3つの条件」と題するOp-edを寄稿しました。

その中で同首相は、「ハマスが破壊され、ガザが非武装化され、パレスチナ社会が脱過激化されなければならない。これらは、イスラエルとガザの隣人パレスチナとの和平のための3つの前提条件である」と述べています。

また、「パレスチナ自治政府がガザを非武装化するという期待は夢物語だ。現在、パレスチナ自治政府はユダヤとサマリアでのテロリズムに資金を提供し、賛美し、パレスチナの子どもたちにイスラエルの破壊を求めるよう教育している。当然のことながら、ガザを非武装化する能力も意志も示していない。2007年にハマスがガザから追い出すまで、彼らは非武装化に失敗した。イスラエルは当分の間、ガザに対する安全保障上の責任を負わなければならない」と述べています。

ネタニヤフ氏は、バイデン政権が主張する「パレスチナ自治政府の下でのガザ再建案」を改めて否定し、「イスラエルが当面ガザを占領する」と宣言したのです。

同首相が提示した3つの「前提条件」のうち、「パレスチナ社会の脱過激化」は非常に困難で、ほとんど達成は不可能と思われるような条件だと言えます。戦争を続け、パレスチナ人を殺せば、過激な敵対感情が生まれ、当然パレスチナ人の過激化は進んでしまいます。戦争を継続しておきながら、パレスチナ人の「脱過激化」を進めろというのは、火に油を注いでおきながら鎮火を求めるようなものです。

ネタニヤフ首相は、改めて、この戦争に終わりがないことを宣言したと言えるでしょう。

高まるイランとイスラエルの緊張

フーシ派による攻撃も収まる様子が見られません。12月11日、紅海でフーシ派がタンカーにミサイル攻撃し、船体が一部炎上。15日にはイエメン沖でフーシ派がリベリア船籍の船にミサイル攻撃を行い、23日にはインド沖でリベリア船籍の日本のタンカーにイランから無人機攻撃がありました。

とりわけ23日の攻撃は、インド洋を航行中のケミカル・タンカーに対してなされ、米国防総省は、「イランから直接発射されたドローンによって攻撃された」と発表しました。もちろんイランは関与を否定しています。

この攻撃はイエメンから1,530マイル離れた場所で行われています。現在フーシ派が使用しているイラン製の攻撃型ドローン「シャヘド136」は1,600マイルまで射程があるので、理論的にはイエメンから発射された可能性も排除できないでしょう。

米政府は、イランの革命防衛隊がイエメンのフーシ派にリアルタイムの情報とドローンやミサイルなどの武器を提供しているとしてイランを非難してきました。

イラン革命防衛隊が管理する紅海の監視船が収集した追跡情報はフーシ派に提供され、フーシ派は、バブ・エル・マンデブ海峡を通過する商業船を攻撃するためにそれを利用しているとされています。実際、フーシ派は船を狙うレーダー技術を持っていないため、イランの援助が不可欠です。イランの支援がなければ、ミサイルは海中に落下するだけになるでしょう。

紅海からインド洋まで、海上でのイスラエル・米国とイランの間の緊張が高まっているのです。

そんな中、25日には、シリアでイラン革命防衛隊の高官がイスラエルに爆殺される事件も発生しました。イランの国営通信は同日、イラン革命防衛隊の幹部がイスラエルによるシリアへの攻撃で死亡したことを伝えました。イランのライシ大統領は声明で「イスラエルが代償を必ず払うことになる」と報復を示唆しています。

イラン・メディアによると、殺害されたのは革命防衛隊のムサビ上級軍事顧問。イスラエルがシリアの首都ダマスカス近郊で、3発のミサイルで攻撃したとされています。

ムサビ氏は、シリアにおいて最も影響力のあるイラン革命防衛隊の司令官で、駐シリア・イラン大使との会談後に殺害されたようです。ムサビ氏はシリア経由でレバノンのヒズボラに武器などの支援をしてきた工作活動の責任者だったと伝えられています。

2020年1月にイラクでソレイマニ司令官が米軍に爆殺された事件を彷彿させる事案です。イランは、フーシ派を通じてイスラエル関係船を攻撃することでイスラエルに圧力をかけていますが、イスラエルも、イランを挑発し、イランの過剰な行動を引き出すことで、「イランの脅威」を強調しようとしているようです。

26日にはインドの首都ニューデリーにあるイスラエル大使館近くで爆発があったことも発表されました。世界的にイスラエル権益やユダヤ教関係施設がテロなどの攻撃を受ける可能性も高まっています。

ガザ戦争の影響力が周辺地域に拡大しているだけでなく、イランとイスラエル間の「暗闘」が世界各地で展開されていることに留意が必要です。

「世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。今こそ歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが必要になっています。
今後とも一緒に学んでいきましょう!

菅原 出

OASIS学校長(President


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