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イスラエル・ハマス戦争は地域紛争に拡大してしまうのか?

イスラエル ハマス 学校長 飛耳長目 Nov 15, 2023
連載コラム|菅原出飛耳長目

こんにちは!オンラインアカデミーOASIS学校長の菅原出です。

イスラエル・ハマス戦争の最新動向

イスラエルがハマスに宣戦布告をしてから早くも一カ月以上が経過しました。10月27日にガザへの地上侵攻作戦を始めたイスラエル軍は、11月15日には、ハマスが地下に隠れているとされるガザ市最大級のシファ病院に「進攻」したことが伝えられています。

戦闘での死者数はガザで1万人を超えたと伝えられ、周辺のアラブ諸国は米国に対し、イスラエルに圧力をかけて即時停戦を実施するよう迫っており、そうしなければ中東全体の安全保障が脅かされることになる、と警鐘を鳴らしています。

イスラエルのガザでの戦闘が激しさを増すのと合わせて、レバノンのヒズボラはイスラエル北部に対する攻撃を少しずつ強めています。ヒズボラとイスラエル軍の戦闘は国境付近の限られた範囲内で展開されていますが、双方の攻撃範囲が少しずつ拡大し、標的も軍事拠点だけでなく、民間人や民間施設も含まれるようになってきています。

レバノンから発射されたロケット弾は、2006年の戦争以来、最も深くイスラエル領内に到達しており、イスラエルが「レッドラインを超えた」と判断した場合、イスラエル軍はベイルートを攻撃する可能性があります。ヒズボラ副司令官ナイム・カセム氏は、「イスラエルがガザ地区への致命的な攻撃を続ければ、国境を越えた攻撃をエスカレートさせる」と述べており、今後注意が必要です。

抑止の薄れる米国の中東介入

米国は更なる中東への軍備増強を進めています。11月4日に、ドワイト・D・アイゼンハワー空母打撃群が、誘導ミサイル巡洋艦USSフィリピン・シー、2隻の誘導ミサイル駆逐艦USSメイソンとUSSグレイブリー、そして9個航空戦隊とともに中東に到着したことが報じられました。

さらに11月5日に米国防総省は、潜水艦1隻を中東海域に配備したとわざわざ発表。中東を管轄する米中央軍は、オハイオ級潜水艦がこの地域に到着したとX(旧Twitter)への投稿で明らかにしました。通常、潜水艦がどこにいるのかは極秘事項ですし明らかにしないものですが、米軍はあえてそれを明らかにすることで、軍事力増強をアピールし、イランや親イラン派武装勢力の行動を抑止しようと努めています。

しかし、これだけ軍備を増強しても、シリア・イラクに展開している親イラン派武装勢力、いわゆる「抵抗の枢軸」に加盟する民兵組織は、両国に駐留する米軍に対する攻撃を止めません。

本稿執筆時点で、両国の米軍はロケット弾や自爆型無人機による攻撃を合計52回も受け、これらの攻撃で少なくとも米軍兵士45名が外傷性脳損傷や軽傷を負っていると発表されています。

その報復として米軍は、シリアにある民兵勢力の武器庫を10月27日と11月8日に二度空爆しました。しかしそれでも攻撃は止まないため、11月12日に米軍は、今度はシリア東部とイラクとの国境沿いにある彼らの訓練キャンプを空爆し、民兵勢力の間で死傷者が発生したと報じられました。武器庫を破壊しても抑止効果がなかったため、今度は人員を攻撃したのです。

しかし、その直後にシリアの米軍拠点に無人機攻撃が4回行われていますので、まだ親イラン派武装勢力の行動を抑止できていないようです。米軍は次にはどこを攻撃するのでしょうか?細かく双方の攻撃をみていくと、少しずつエスカレーションが起きていることが分かります。

イスラエルとヒズボラの戦闘の場合、イスラエル軍がベイルートを攻撃した場合、シリア・イラクの場合は、米軍がイラク国内の民兵勢力の拠点を攻撃した場合、さらなるエスカレーションが起き、紛争リスクが大きく拡大する可能性があります。中東の治安情勢をウォッチしている方は、リスクレベルを上げるかどうかの判断材料として参考にしてください。

結び: 世界の変動を共に学ぶ

11月22日(水)には、「中東情勢と米vs中露の世界秩序を巡る綱引き」と題して5回目の「教えて〇〇先生」を開催致します。今回は、笹川平和財団・主任研究員でロシア専門家の畔蒜泰助先生と菅原が対談形式で、ガザ戦争の行方やこの戦争が中東秩序に与える影響、さらに中国やロシアがこの問題をどのように今後の対米戦略に織り込んでいくのか等々について議論したいと思っています。皆様、奮ってご参加ください。

また、11月25日(土)には「第2回外交・安全保障キャリアフォーラム2023」(https://careerforum.gaikoanposeminar.com/)も開催致します。日本国際問題研究所・研究員の吉田優一さん、LINEヤフー株式会社・経済安全保障室長の布施哲さん、日本エネルギー経済研究所・主任研究員の小林周さん、慶應義塾大学SFC研究所・上席所員の部谷直亮さん、そしてNewsPicks記者のキアラシ・ダナさんが登壇され、国際協力機構(JICA)や防衛省航空自衛隊の他、グローバルで医療支援サービスを展開する日本エマージェンシーアシスタンス株式会社、世界最大の民間セキュリティ会社G4Sの日本法人G4S Secure Solutions Japan、アフリカ・ビジネスで圧倒的なパワーをみせる総合商社豊田通商株式会社が、それぞれ興味深いプレゼンテーションを披露してくれます。昨年大人気だった公安調査庁と今年初参加の松下政経塾のブース展示もあります!

他に類を見ない貴重な機会ですので奮ってご参加ください。

「世界は今、100年に一度の大きな変動期を迎えています。今こそ歴史や地政学をはじめ、国際政治や安全保障を基本から学ぶことが必要になっています。

今後とも一緒に学んでいきましょう!

菅原 出

OASIS学校長(President


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